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ひとりで死んでも孤独じゃない(つなぐ図書館 NO.003)

―「自立死」先進国アメリカ―(新潮新書)

ひとりで死んでも孤独じゃない―「自立死」先進国アメリカ

日本で多発している「孤独死」。それはいったい何故なのか、米国の取り組みと比較しながらその理由について考える矢部先生の「ひとりで死んでも孤独じゃない」を読み、今後のあるべき日本の高齢社会について考えてみました。

日本の「孤独死」、米国の「自立死」

日本では友人も社会的なつながりもなく孤立した生活をした挙句に誰にも看取られずに亡くなる孤独死が多発しています。けれども、米国ではそのようなケースはほとんど聞かないそうです。同じ一人暮らしをしているのに、米国では孤独感や寂しさとは無縁の生活を送り、自立したまま死んでいく。この「自立死」と言える現状がある米国と日本では多くの違いが存在します。

 

日本で孤独死が多発する理由

経済協力開発機構(OECD)が加盟国20か国を対象に行った調査(2005年)によれば、日本人の社会的孤立度は先進国で最悪レベルにあり、それが故に日本では孤独死が相次いでいるようです。そんな日本の孤立の原因としては以下の3つが考えられます。
1.単身世帯が増える中で家族の絆や職場のつながりが急速に失われている。
2.日本人は家族以外の人との付き合いが少なく、社会的インタラクション(互いに働きかけかけ合う行為)もさかんではないため、孤立になりやすい。
3.介護保険や生活保護などを含め従来の社会保障システムが家族世帯を前提に設計されているため、最近の単身世帯の急増にうまく対応できていない。

 

孤独死ではなく自立死が存在する米国とは

単身世帯というのは、世界的に増えていてそれは米国でも同じです。米国でも同じように単身世帯は増加していて一人で亡くなる人は多い中で、日本のような孤独死はほとんどなく、社会とつながりを持ったまま自立した死を迎える人が多くいます。その理由としては以下が挙げられます。

 1.社会的つながりをもてる環境が整っている。

例えば連邦政府が予算の半分を負担して行われる、体が不自由で買い物や料理ができない一人暮らしの高齢者に温かい食事(ホットミール)を届ける、「ミールズ・オン・ホィールズ(MOW)」と呼ばれる配食サービスもその1つ。他にも自分の家をもたず経済的にもあまり余裕のない人には政府支援の高齢者専用住宅、また低所得者や路上生活者には必要最低限の住まいを確保できるように政府支援を受けた独居者専用住宅(SRO)が用意されていたりもします。また住まいを提供するだけでなく、住宅では様々な交流会や講演会、ワークショップなども行われており、孤立化を防ぎ人とのつながりを持続的に持てるような取り組みが多くあるようです。また、高齢者に積極的に働く場を提供する団体も存在し、誰かの役に立てる機会というのが多くあるのも現状です。

 2.孤独死をなくす取り組みが積極的に行われている。

米国では自宅で突然意識を失ってそのまま亡くなり何週間も発見されない、というケースを防ぐために緊急通報付きペンダントを配布するなど緊急事態に対応するサービスも積極的に提供しています。

 3.家族との繋がりが深い中で、個々が自立した考えを持っている。

米国にはできるだけ人に頼らず自立して生きることを大切にする伝統があります。そのため、高齢者自身が自分の子供と一緒に住むことを望まず、子供の負担にならずに自由に自立して生きたいと考えているのです。ですが、家族の絆は強いので離れて暮らしていても、定期的に家族の時間を設けたりしてます。

このように、米国は一人で生きることを前提にした社会だからこそ、その問題点もよく認識し政府やNPO、企業などが独居者の孤立を防ぐ支援サービスを積極的に行っています。

 

これからの日本

現在、高齢者が住みやすい環境、コミュニティをいかに実現するかが先進国に共通した課題となっています。今後は日本も米国のように独自の文化や価値観、社会システムなどを生かしながら、高齢者の増加に伴う孤立や孤独死などの問題にもっと積極的に取り組む必要があります。
そんな中、環境を整えることも大切ですが高齢者自身でも「社会とつながりをもつ働きかけをすること」が大切になってきます。何故ならば、社会とつながりを持つことは孤独死を防ぐ有効な方法の1つであり、人生の充実にも大きく繋がっていると考えられるからです。

OECDは加盟国29か国を対象に各国の国民が平均していくつの社会団体に所属しているかを調べたところ、1位は米国で3.3団体、日本は0.8団体で20位という結果でした。つまり、一人で生きることを前提にした米国では、人々は多くの社会団体に属することで人間関係や社会的つながりを築き、お互いに必要な時は頼り合いながら自立した生活をし、孤独死を防いでいるのです。
日本にも高齢者が参加できる社会団体や高齢者が活躍できる団体は多く存在します。高齢者になるにつれ幸福度が下がると言われている日本社会では、これから会社だけでなく、社会団体に属するということが大切になってくるのではないのでしょうか。

私たち、つなぐいのち基金も高齢者に対して養護施設の子供に自身の話をしていただく機会や、社会とつながりをもつような支援を行ったりしています。またサポーターとして一緒に活動していただいたりもしています。そこで活躍する高齢者の方々は会社で感じるものとはまた違う充実感を日々感じているようです。「何かの役に立っている」という実感を持つことは、健康的で自立した生活を促し、いくつになっても人生に輝きをもたらし続けるものだと思います。私自身もそんな充実感を感じながら、人との繋がりを大切にこの先の人生を歩んでいきたいです。

(2016.11.16 学生インターン 柳沼星羅)