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子どもの貧困連鎖 (つなぐ図書館 NO.005)

新潮文庫 2015年5月28日

子どもの貧困連鎖 (新潮文庫)

 

 

『子どもの貧困連鎖 (新潮文庫)』 を読んで

内閣府の子ども・若者白書によると、子どもの相対的貧困率は上昇傾向にあり、2009年の国民生活基礎調査では子どもがいる世帯の貧困率は14.6%であった。特に大人一人で養育している家庭の経済的な困窮が目立つという。国際的に比較しても日本における子どもの貧困率は高くOECD諸国の平均を上回っている。身体的・精神的に成長し多感な時期である子ども時代に貧困状態に置かれることの影響は大きく、学校生活にも大きな影響が出ると考えられる。保坂渉・池谷考司『子どもの貧困連鎖』(新潮文庫、2015年)のルポの事例から、子供の貧困が学校生活に与える影響について紹介する。

 

学生が自分で生活費を賄うためのアルバイトによる影響

貧困が高校生活に与える影響の一つに学業に専念できない、というものが挙げられていた。ある高校生は、親に金銭的な余裕がなく生活費を自分で支払うためにアルバイトで稼いでいた。その生徒に代表されるような貧困のためにアルバイトをする生徒は増えているという。定時制高校の生活指導担当者によると、以前はアルバイトの目的が自由に使用できる金銭の獲得だったのに対し、最近では学費・生活費のためという生徒が増えたという。その生徒も自分で生活費を稼ぐために3つのアルバイトを掛け持ち、睡眠時間が一日二時間しか取れない生活が続いた。

この生徒のように生活費を自分で稼ぐことが与える学校生活への影響には、学校の勉強についていくことが難しくなることがある。自分で生活費を賄うためには10万円以上は稼ぐ必要があり、必然的にアルバイトに従事する時間が増える。睡眠時間を十分に確保できないことによる授業時間の居眠り、アルバイトの先からの移動の都合による一時間目の授業への遅刻・欠席などが常習化してしまう。すべての授業に出席し、集中して学ぶことができずに勉強面で遅れると考えられ、過度なアルバイト労働が本来優先すべき学業への専念を著しく妨げていると言える。勉強面で遅れ単位を取得できなければ高校卒業も厳しくなり、生徒の将来に大きく影響を与えることになる。

 

貧困が原因となる学校での疎外

また、貧困は学校での居場所をなくす一つの要因となりうることが紹介されていた。これは建設現場で働く少年と無理をして私立学校に通った経験のある少女の事例から説明できる。少年は母子家庭で家計を支えるために建築現場で早朝から夕方まで働き詰めの日々を送っていた。親のすねをかじっている、つまり自分で働かずに悠々と生活できる他の生徒を見ると少年は苛立ち学校で暴力などの問題行動を起こすようになり、教師の間で彼を退学にしようという動きが出たという。私立に通っていた少女は、豊かな同級生に「貧乏人」と呼ばれ、いじめられたという。お弁当、学校指定の靴下や体臭などで家庭が貧しいことがすぐに周囲に明らかとなったからだ。少女はその後家から金銭を盗むなどの非行行動に走るようになった。

この二人の事例から、家が貧しく他の生徒と違うこと、他の人が普通にできることができないという意識を強く感じることで学校での疎外感を強く感じたことが暴力などの問題行動に繋がったのではないかと推測できる。人は自分と違う存在に対して敏感に反応する。高校生の時期は特に多感であり人生の経験も少ないため、疎外感を感じることで自分の全てが否定されている印象を強く抱いてしまう可能性がある。私立学校に通っていた少女はストレスから過食症になり自殺未遂もしたことがあるという。このように貧困が原因となり学校で疎外感、自己否定感を抱くことは生徒自身にとって多大なストレスとなるだけでなく、学校から生徒を遠ざけさせ卒業を妨げる要因になると考えるため、重要な影響であると考える。

 
学校生活は学業の場であると同時に他者との付き合い方などを学ぶ、社会勉強の場でもある。学校生活の思い出やそこで得た友人は子どものその後の人生に関わってくると考えている。物質的な困難をもたらすだけでなく学校生活にも悪影響を及ぼす可能性のある「子どもの貧困」は早急に対処すべき課題であるだろう。

 


注1
定時制課程とは学校教育法第4条において「夜間その他特別の時間または時期において授業を行う過程」と定められているもの。

 

(学生インターン N.N)