助成先取材レポート

児童養護施設『錦華学院』インタビュー

(公益移行認定前)助成先レポート 児童養護施設『錦華学院』インタビュー

児童養護施設『錦華学院』とは?

児童養護施設 錦華学院は明治18年に「私立予備感化院」として創立されました。大正12年に「財団法人 錦華学院」に改称し翌年の5月に現在地に移転しました。昭和27年に社会福祉法人の認可を得ました。100年以上に渡り子供の成長のサポートに取り組まれている児童養護施設です。

錦華学院活動インタビュー

つなぐいのち:錦華学院は昔からこの場所にあるのですか?

土田院長:いいえ、錦華学院はもとは渋谷区にあって東京感化院として創立されたんです。その後、こちらに移転して児童養護施設となりました。現在は2歳から18歳まで52名の子どもがここで生活をしています。

つなぐいのち:そうなんですね。子どもたちは全員同じ場所で生活をしているんですか?

土田院長:施設の中にある4つの寮舎に分かれて生活をしています。 それぞれの寮舎には玄関やリビング、お風呂場などがありひとつの家庭の形になっています。子供たちはここから学校へ行き、クラブ活動などを終えてこちらに帰宅します。

児童養護施設はただ衣食住を提供するだけなく、子供の成長をさまざまなかたちでの支援により見守っていく、多機能型施設へと変わっていっているのです。 また、錦華学院では今年から養育里親の支援もおこなっています。

里親に預けられる子供は全体の1割程度なのですが、家庭内で子供を育てるには、その子が抱える心の傷やその子の親の状態など、簡単には解決できないような問題が生じます。そのため、施設の職員
が指導や支援をしています。

つなぐいのち:里親に預けられる子どもは非常に少ないのですね。児童養護施設は全国でどれくらいの数あるのですか?

土田院長:今全国に591ヶ所あり、保護を必要としている4万人の子どものうち8~9割が児童養護施設で暮らしています。その中でも近年は虐待を理由として保護される子どもが多く、全体の6割にあたると言われています。施設に来る子どもたちは精神的に大きなダメージを受けており、臨床心理士や精神科医の専門家を配置し子どもたちの傷が少しでも癒えるようにケアをしています。

また、その子の親が問題を抱えているようであればこちらも専門家によるケアをおこなっています。また、基本的に施設の子どもは18歳で退所するのですが、一度施設を出てから住む場所や仕事に困る子どもも多くいます。

そういった子どもに対して、仕事を紹介したり生活の相談に乗ったりとアフターケアにも力を入れています。

つなぐいのち:なるほど。色んな分野の専門家の方と一緒に、子どもたちを支援しているのですね。他
にも新しく始めた取り組みがあると伺ったのですが。

土田院長:今年度から、陶芸を始めました。陶芸のスタートにあたって、様々なつながりからたくさんの方に必要な道具や材料などの寄付をいただき、嬉しい気持ちでいっぱいです。陶芸の指導者として、前に小学校の美術の先生をやっていた方が協力してくださり、陶芸品やコースターを作っています。

これらの作品は、秋ごろに当園で開催する地域 (上)作成中のコースター交流のお祭りで展示をするほか、バザーで出店する予定 (下)幼少児童のねんど制作です。子どもたちにものを作るということ、そして作っ
たものが評価され、それがお金に変わるという喜びを感じてもらいたいと思います。

この陶芸を、地域交流の新たなきっかけのひとつにしていきたいですね。

つなぐいのち:本当に様々な面から子育てをされていますが、やはり大変なことも多いかと思います。どういった点が難しいと感じていらっしゃいますか?

土田院長:錦華学院の運営に関していうと、他の児童養護施設も同じような悩みを抱えていると思いますが、やはり我々職員の数が足りないということです。 錦華学院では、ひとつの寮舎に対して職員が4人ついているのですが、24時間体制で見守らなければならないので、結果的に一人もしくは二人で子どもを見ていることになるんです。

職員のなかには家庭を持っている者もいるので、みんなで協力しながら回しています。あとはやはり財政面の問題ですね。国からの補助金が出るのですが、やはり元気な子どもたちなので。家具が壊れたり、老朽化が進んだり、また、新たな職員を雇うとなるとお金がかかる。
だから簡単には職員を増やすことができない。この二重構造に悩んでいます。 児童養護全体としては、やはり子どもを保護する体制がまだ薄いと思います。 施設の定員も限られていることから、その空きに合わせて子どもを保護している、というのが現状です。

そのため、施設に入ることもできずにつらい生活を送っている子どももまだたくさんいると思われます。子どもをより多く保護するためには、みなさまの正しい理解を得た上で、施設や人員を増やしていくことが必要となります。

つなぐいのち:やはり、保護されるべき子どもの数に対して見守る職員の数が足りないのが大きな問題なのですね。
土田院長:たしかに子育ての面は厳しいですが、それとは別の範囲たとえば学習支援や散髪、環境整備などの場面でたくさんの方に人的支援をいただいています。地域のみなさまの温かいお気持ちが職員を、そして子どもたちを支えています。

施設にいる子どもも、そうでない子も、地域全体で子育てをしていけるような環境を築いていきたいと思います。

つなぐいのち:みなさんで子どもを育てていくというのは非常に良いことだと思います。では最後に、錦華学院の今後の展望を伺わせてください。

土田院長:錦華学院では展望委員会を設置して、今後目指すかたちについて話し合っています。その中で主に話し合われていることが3つあります。ひとつ目は、寮舎での生活体の人数を減らすことです。現在は11から12人で生活しているので、第一段階として8人まで減らしたいと考えています。

ふたつ目は、それにともなった寮舎の増築です。そしてみっつ目はグループホームの増築です。現在はここから20分ほどの場所にあるグループホームで6人の女子が生活しているのですが、このかたちを増やしたいと思っています。

つなぐいのち:大変勉強になりました。ありがとうございました。

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