助成先取材レポート

青春基地というメディアがつなぐ想定外の未来!

助成先取材レポート 青春基地

郁文館グローバル高等学校 福祉ゼミとの協働プロジェクト「あいりすプロジェクト」の活動として
高校生と一緒に2017年度事業対象の助成先団体 のインタビュ-取材と助成事業の進捗状況の確認にお伺いしたものを取材レポートして報告いたします。

 

【高校生 インタビュー取材】

私たち、郁文館グローバル高等学校3年生の2人は2017年9月9日に公益財団法人つなぐいのち基金の助成先である「特定非営利活動法人 青春基地」を訪れ、取材・インタビューをさせていただきました。

 

■NPO法人青春基地

まず、青春基地さんについて紹介させていただきます。

 

法人の目的

「自分はダメな人間だと思うことがある」と72.5%の高校生が感じているという調査結果(2015年国立青少年教育振興機構調べ)は、他国と比べても数字が高く、現在、日本の高校生の自己肯定感の低さが課題になっています。

NPO法人青春基地は、10代による発信ではなく、それを発信する <過程>に注目し、プロジェクトづくりや取材・編集などの<経験>を大切にしたプログラムを全国の公立高校の授業の一環として、また放課後のなかで届けています。

このPBL(Project Based Learning)と呼ばれる実践型学びを通じ、一次情報に出会うなかで「やってみたい!」に挑戦できる感覚や、アクションする楽しさを掴める場を目指しています。「どうせ、私は~。」「私なんて~。」 と必要以上に悩みを抱え、日々を消耗するのではなく、自分で動き、自分を信じて未来を切り開いていってほしいと考えています。

 

青春基地のコンセプト

コンセプトは、「想定外の未来をつくる!」ということです。さらに、「基地」には、皆の心の拠り所になれば良いという思いが込められています。何かを始める時、重要なのは自分の思いに出会うことです。不安な気持ちもあるけれど、とりあえずやってみるという気持ちを大切にし、活動をしています。

 

代表理事   石黒和己(Wako Ishiguro)

1994年、愛知県生まれ。東京大学大学院教育研究科修士課程。中高はシュタイナー学園で過ごす。慶應義塾大学総合政策学部在学時には認定NPO法人カタリバが委託運営する「文京区青少年プラザ(通称b-lab)」の立ち上げと運営に携わった。※b-lab(ビーラボ)とは、「いつでも、なんでも挑戦できる中高生の秘密基地」をコンセプト(b-lab HPより)に、2015年4月にオープンした教育センター(複合施設)の中にある区内初の中高生向け施設。

 

 

青春基地 HP   http://seishun.style/about/

facebookページ  https://www.facebook.com/seishunkichi/

 

 

活動の実績 (2018年3月時点)

(1) 通年・放課後プロジェクト(放課後自由参加型の課外PBLの提供):約30名
(1) 通年型プログラム:山梨県立富士北稜高校3年生30名/福島県立ふたば未来学園2年生20名など
(2) 出張授業:宝仙学園高等部理数インター1年生174名/千葉県立小金高校1年生327名/岐阜県各務原市立那珂中学校3年生200名

 

■ 青春基地の始まりと取り組み

2015年9月1日設立。
「想定外の未来をつくる!」が青春基地のコンセプト。”想定外の未来”とは自分にとっての将来のこと。現代の若者に多く見られる自己肯定感の低さを解消すべく、青春基地では本人のやりたいことをサポートすることで、一人ひとりの考え方の変化に伴走しています。
設立当初から運営している中高生による中高生のためのウェブマガジン「青春基地」では、高校生が「会ってみたい!」と思った人を突撃取材し、記事をウェブで公開しています。そこで大切にしているのはウェブの作り手のプロセス。制作する中で失敗や成功、喜びを仲間と体感できる時間を仕掛けています。

<自己肯定感とは?>
自己肯定感とは「自己を肯定する感覚」、つまり「自分は大切な存在だ」と感じる心の感覚のことです。

 

■ 現在の青春基地の取り組み

青春基地は立ち上げ当初、放課後の自由参加型のプログラムとして活動を行ってきましたが、最近はこのような取り組みを授業内に組み込もうということで、福島県と山梨県の高校に訪問し、毎週の出張授業を行っています。ゲストとの出会いや、グループワークを通して生徒たちは、自分と社会を少しずつ接続しながら探求しています。学校との授業の打ち合わせや移動時間などを含めると、活動はかなりの時間になるそうですが、プライベートの時間もある中でこの活動を続けられているのは、日常だからこそ気づける子どもたちの変化があり、それが石黒さんらメンター陣のモチベーションとなっているからだそうです。

 

 

取材を通じて学んだこと

私は、今の日本には何か新しいことを始めたいと考えている人がたくさんいると思います。しかし、それを行動に移すための環境が整っていません。青春基地は、そのような人たちが活動を始めるきっかけになると考えました。未来を変えたいと考えている人にこれらの活動が広がれば、さらに新しい価値を見出すと同時に彼らの自信に繋がるので、この先、多くの人の支えになるのではないかと考えました。(高校三年 A)

今回の取材では 石黒さん、千葉さんから貴重なお話を伺うことができ、取材からの学びは本当に大きなものとなりました。インターネットの急激な普及がなされた現代社会において、若者の他者とのコミュニケーションは減少傾向にあり、故に彼らの将来の対人関係などに影響を及ぼしていると思います。青春基地さんの活動や目標は現代の若者が”自分とは何か”また”他者との繋がりとは何か”をよく考えることができるものばかりだと感じました。「”自分には無理だ”という考えは自分で何かをやってみて、そこから学ぶことでしか捨てられない」という石黒さんの言葉が印象的で、私自身もっと多くのことに取り組み、周りからたくさんの刺激を受けて成長し続けたいと思いました。(高校三年 R)

※ 高校生のプライバシー保護のためイニシャルとさせていただいています。

 


 

【公益財団法人 助成選考委員会 選考委員 よりご報告】

◇助成対象事業

(申請書より抜粋)

福島被災生徒を対象とした「原子力災害からの復興」がテーマのメディアづくりと放課後のチャレンジ応援事業。

ミッション:震災と原発事故を機に、課題先進地域となった双葉郡で生まれ育った生徒たちに「やりたいこと」に挑戦する機会を届け、学習意欲・自己肯定感を向上させる。

アクション:福島県立ふたば未来学園の高校2年生、メディア・コミュニケーション班と一緒に、「原子力災害からの復興」に向けた今までの道のり、これからの取り組み、今感じ、思うことを伝えるためのメディアづくりを行います。

①探求学習の授業で「原子力災害からの復興」をテーマとしたメディアをつくる
1.授業支援(ユースメンターの派遣)
2.授業開発(カリキュラム/教材/プログラムの開発)
②放課後のチャレンジを応援する
1.課外としてのプロジェクト活動支援
2.進路支援

<実施スケジュール>
2017.4.1 新学期開始
(小論文/インプット/探求)
2017.9.20 未来創造探求発表会
(インプット/探求)
2017.11.27 未来創造探求プレ発表会
2017.12.15 SGH研究成果発表会
(小論文/探求)
2018.2.21 未来創造探求中間発表会

 

◇助成対象事業のねらい

(1)震災、原発事故を機に体験した苦しい経験
2011年3月11日の東日本大震災以降、原発事故の影響から帰宅困難区域にそのほとんどが指定された双葉郡。震災後、避難生活を続け様々な土地を転々としてきた生徒も少なくありません。また、転校先でのいじめなどたくさんの苦しい経験を積んだ生徒も一定数以上おり、学習の習熟度だけでなく心の面で課題を抱える生徒もいるのが実情です。

(2)忙しい外部人材、不慣れな教員
福島県立ふたば未来学園の探求学習のテーマは「原子力災害からの復興」となっており、メディア・コミュニケーション班はその中で日本国内だけでなく世界へ向けて、復興の様子や双葉郡の今を発信していくことを目的としています。しかし外部講師や外部連携先など外部人材は日常的に生徒たちに寄り添い、活動を支援することと、本業との両立は難しい現実があります。授業のデザインは各班の担当教員に大きく裁量を委ねているものの、時間だけでなく、専門教科外の学びのデザインに不慣れであることが2年間の学校運営の中で見えてきています。

(3)探究学習の邪魔をする縦の関係性
探究学習においては、先生が教え生徒が学ぶという縦の関係性にある学習モデルではなく、一人ひとりが学び合う姿勢が大切にされています。しかし、探究学習を設計し担当している教員は、他の科目の専科教員であり、他の授業では縦の関係性で接する必要性もあります。

本事業では、このような既存の関係性があるからこそ、運営しにくい探究学習に、利害関係のない学生による「ナナメの関係」を持ち込み、学び合いをサポートします。

 

◇活動で期待できる成果は?

多くのプロジェクト支援者の協力もあり、青春基地さんの期待成果やゴール設定が明確になっています。

(1)授業を通じて自分自身と丁寧に向き合うことで、一人ひとりが自分の進路につながることに取り組み、目の前の学習に前向きに向き合うことができる状態
(2)探究学習で一人ひとりの「やりたいこと」に挑戦する機会をつくり、学習意欲の向上と自己肯定感の向上につなげることができている状態
(3)お互いの目標を共有し、応援しあうことのできる「学びの共同体」ができている状態?
(4)教科学習の中で学ぶ知識やスキルを活用する場として、探究学習を活用することができている状態

アウトカムの指標として、プロジェクト実施後における、学習意欲・自己肯定感の向上が設定されています。

本事業で目指すのは、生徒一人ひとりの「やりたい」という思いからはじまる学びを探究学習の中で実現し、目指すのは生徒たちの学習意欲・自己肯定感・自己効力感の向上です。

 

◇助成選考委員会 選考委員から

代表の石黒和己さんをはじめ多くの若い力がより良い将来に向けて活き活きと躍動しています。更に、多くの先輩となる団体やプロボノの方々に、大きな期待を込めて応援していただいているという事実も注目すべき点です。

取材を通して、助成先として選考させていただけたこと、改めて良い選考ができていると確信することができました。多くの方の寄付等のご支援を、青春基地さんにつなぐことで、被災によりフェアなスタートラインに立つことができない厳しい状況にある子どもたちの支援につながっているとご報告できることを嬉しく思います。

支援の輪が拡がることを期待しております。引き続きよろしくお願いいたします。

Spread the love