助成先取材レポート

児童養護施設『晴香園』インタビュー

(公益移行認定前)助成先レポート 児童養護施設『晴香園』インタビュー

児童養護施設『晴香園』とは?

児童養護施設「晴香園」は、児童福祉法に定められた児童福祉施設の一つです。さまざまな事情により、家庭による養育が困難なおおむね2歳から18歳の子どもたちが生活しています。どんな理由であれ、親元から離れるのはつらいことです。「ありのままの自分の全てを、ただすっぽり包んで、やさしく受け入れ、認め、愛してほしい…」 そんな子どもの純粋な気持ちを大切にし、成長をささえる児童養護施設です。

 

晴香園HP: http://www.s-haruka.org/
※つなぐいのち基金2012年度助成先

 

晴香園活動インタビュー

つなぐいのち:とても素敵な建物ですね。晴香園さんの施設内にはこども館というものがありましたが、これも施設にいる子どもたちが遊ぶ場なのですか?

箱田施設長:ありがとうございます。晴香園が設立されてからもうすぐ12年なので、比較的新しい施設かと思います。地域になじみやすいような外観にしました。こども館は地域の人々を対象に、さまざまな親子や子どもが集まる遊びの場として提供しています。

特に火・木・土の週に3回は「おやこ DE ひろば」を開催し、地域の子育て支援の拠点として育児相談や育児講座などを実施しています。また現在、子どもを育てる親たちが集まることのできるカフェも建設中です。

こうしたスペースを提供することで、交流の場を作ると同時に地域に開かれた施設となることを目指しています。 晴香園で身につけていって欲しいものとして、学ぶ力・社会参加・健康・自尊心の4つがありますが、子どもたちの社会参加という面でも開かれた施設であることは重要だと思っています。

つなぐいのち:では、子どもたちが施設の外の方と関わる機会も多く設けているのですか?

箱田施設長:そうですね、なるべく多くの人と関わり、子どもたちの世界を広げたいと思っています。ボランティアさんにも積極的に協力をお願いし、学習支援や読み聞かせ・ピアノ教室などをしていただいたり、職業支援として様々な職種の方に仕事について話をしてもらったりしています。

職業選びもそうですが、施設で生活していると得られる情報の量が少なく限られてしまうのが問題となっています。というのも児童養護施設は子ども中心の生活環境になっているため、たとえば子ども向けの本しかなかったり、子ども向けのテレビ番組ばかりがついていたり、大人同士の会話がなかったり…と一般的に当たり前とされていることでも知らない、そうではないと子どもたちは思っているのです。

一般家庭の子どもが生活していくなかで自然と目にしたり耳に入ってきたりするような情報も入ってこないので、社会生活が大きく偏ってしまっています。驚くかもしれませんが、働いてもらった給料で生活をしていくことを知らない子どもやご飯はすでに調理されて出てくると思っている子どももいるのです。

このように児童養護施設は一般の家庭の環境と違う点がたくさんあります。この違いをできるだけ多く解消していくために、色々と試しながら家庭や家族に近い環境を作っていっています。

つなぐいのち:なるほど。施設と家庭でこんなにも環境が違ってしまうことに気が付きませんでした。では、施設での環境を家庭に近くするために具体的にどんなことに取り組まれているのですか?

箱田施設長:現在は6~7人がひとつのホームで生活しているのですが、そのホームのなかでの取り組みとしては、食材の調理をする、大人向けの本を置く、家計簿をつける、大人の方をホームに呼んで、大人同士で話をしてもらう、など外の空気を入れ込むようにしています。

また、年末年始や夏休みにはホームステイのようなこともおこなっていて、親元に帰省することのできない子どもを対象に、一般家庭にお邪魔させていただき、「家庭ってどんなところ?」というのを感じ取ることのできる機会を作っています。

子どもたちも第二の我が家のように感じ、ホームステイを楽しみにしており、受け入れてくださる方々も子どもの成長した姿を見るのが楽しみだと言って下さっています。 そして、希望する子どもには塾や習い事にも通わせていて、部活動に入ることも勧めています。

習い事はもちろんのこと、部活動や塾の費用も高校生になると補助をいただくことはできないのですが、本人がやりたいと言うことはできるだけやらせてあげたいので何とかやりくりをして続けられるようにしています。

施設での生活を家庭環境に近づけようとすると、必然的に外との関わりが増えていきます。そのため、周りとの境遇の違いについて辛い思いをすることもあるかと思います。しかし、そうした葛藤を繰り返していくなかで少しずつ自分の境遇を受け入れ、精神力を養い、自立のための力をつけていって欲しいのです。厳しいことを言うかもしれませんが、卒園した後に自分たちで生活していくためには必要なことなのです。

つなぐいのち:たしかに子どもたちの今後の人生を考えると、自分を受け入れていくことが大切ですね。 今後というと、多くの施設さんから財政面で高校卒業後の進学が難しいという話をうかがっているのですが、進学を希望する子どもはやはり少ないのでしょうか?

箱田施設長:たしかに、資金がないために進学を諦めてしまう子どもが多くいます。しかし、それを理由に諦めてもらいたくない、頑張ればできるということを子どもたちに伝えたい、という思いがあり、たくさんの方の協力を得て後援会や晴香学び基金を設立しました。

この基金では、進学してから卒業するまでの費用を援助しています。大学進学を目標に日々勉強に励んでいる子どもや、実際に進学を果たした子どももいますよ。後援会では晴香園全体について支援をしていただいていて、現在800名近い会員がいます。会員の方にはニュースレターを送ったり交流会を開催したりして、子どもの成長を見せています。

つなぐいのち:晴香学び基金の活動がより多くの人に伝わり、子どもの進学を支援する団体が増えていって欲しいですね。 開かれた施設として、地域をはじめ多くの方からの協力を得ながら細かいところにも目を向けて試行錯誤を繰り返しているところが素晴らしいと思いました。

また、子どもたちが元気にあいさつをしてくれたのが印象的で、非常に嬉しく思いました。本日は本当にありがとうございました。

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