助成先取材レポート

思いと絆でつくる地域と子どもたちの「もざいくハウス」

助成先取材レポート もざいくハウス

郁文館グローバル高等学校 福祉ゼミとの協働プロジェクト「あいりすプロジェクト」の活動として
高校生と一緒に2017年度事業対象の助成先団体 のインタビュ-取材と助成事業の進捗状況の確認にお伺いしたものを取材レポートして報告いたします。

 

【高校生 インタビュー取材】

私たち、郁文館グローバル高等学校3年生の2人は9月2日に公益財団法人つなぐいのち基金の助成先であるもざいくハウスさんに訪れ、取材・インタビューさせていただきました。

 

■もざいくハウス

|団体の目標
もざいくハウスの代表である林さんは真のインクルージョン、インクルーシブとは何であるかを考え、障がい者や子ども、高齢者などのいわゆる社会的弱者と呼ばれる人々が「福祉」という枠組みの中でしか安心して生活を営むことができない現状に大きな疑問を抱いています。そこで、もざいくハウスはそのような方たちが「福祉」の枠組みの外でも、地域の中でお互いに助け合いながら安心して暮らすことのできる相互関係づくりを促進することを目標にし、活動しています。
また現在の問題点として、親から虐待を受けた子どもたちを守るために行政が取れる唯一の手段が「親子分離」であることが挙げられます。もざいくハウスではこのような「親子分離」をつなぎとめるためにも、親の心のケアや親子の関係修復を行うことも目的としています。また虐待や貧困などの要因や課題などが個人やその家庭だけの問題にされがちな現代の社会に危機感を抱いています。

HP(運営ブログ) https://ameblo.jp/mosaiclife/
facebookページ  https://www.facebook.com/mosaiclife2014/

 

|活動概要
事業1:児童養護施設での遊びボランティアどんな大人がいるのかな?プロジェクト
このプロジェクトは、児童養護施設の不登校の子どもたちの「なんで学校に行かなくちゃいけないの?」「なんで大人は仕事をするの?」という疑問に対して、その子なりの答えを感じたり考えたりする機会のために始まったものです。林さんは故フリーライターの森絹江さんの「どんな大人になろうかな」という本からインスピレーションを受け、子どもたちには学校での勉強だけでなく、地域のつながりから自分の夢や目標を見つけることができる機会が必要だと確信しました。

初年度の一昨年はパティシエや大工などの職業に就かれている方をお招きして、児童養護施設の小学生の子どもたちのために、仕事をする意義や大人になる意味、またどんな子どもだったかなどについてお話を頂きました。実際にその後、学ぶことの目的を見つけ登校できるようになった子どももいるそうです。

事業2:手芸倶楽部
林さんの他に手芸が得意な方が集まり、児童養護施設の子どもたちに手芸の楽しさを教えています。子どもたちとともにアップリケや簡単な手作り作品を作成中で、女の子だけでなく男の子も積極的に作品づくりに参加しているようです。手芸を通じて子どもたちは技術だけではなく、達成感を学び、集中力を高めることができます。

 

★☆★ クラウドファンディング挑戦中★☆★

「子ども達を国連子どもの権利委員会での意見表明の場に派遣したい」
(もざいくハウスさんも関っている活動 Campfireにて 2018年2月27日までチャレンジ中)

https://camp-fire.jp/projects/view/55765

■ 活動のきっかけ

林さんは幼いころ父親の会社の寮に住んでいたそうです。林さんの家庭は経済的には裕福ではありませんでしたが、寮で暮らしている他の家族との関係が良かったので助け合いながら生活していたそうです。林さんのご両親は生活が苦しい中でも、林さんを施設に預けたり、養子に出すことなく育て上げたそうです。林さんがこの活動を始めたきっかけは「以前から児童養護施設のことが気になっていた」と漠然としていたものでしたが、このような自分の生い立ちを思い返し、また父方の祖父が養護施設出身だったことを後で知り、社会的養護に関心を抱く理由があったことに気づいて、役割のように感じるようになっていったそうです。

 

■ もざいくハウスの最終目標

林さんの最終目標はいろいろな人が住めるシェアアパートを運営することです。児童養護施設の子どもたちと関わりながら、子どもたちが施設を退所した後でも自立の習慣を身につける事のできる場所、頼りになる人がいつもいる、実家のような場所を提供したいと考えているそうです。他にも精神的な病気を抱えている方や、片親家庭などの親子が安心して住める場所を提供したいと考えているそうです。

 

 

取材を終えて

福祉の中でしか関係を持てないのは本当のインクルーシブではないという考え方や、虐待してしまう「親の」気持ちを考える、など私にはない視点で物事を見ていて話を聞くのが面白かったです。
                                       (高校1年T)

今回、もざいくハウスさんを取材させていただいて、他のNPO団体と比較してみると大きな違いがあったので驚きました。一口にNPOや社会福祉法人といっても、それぞれが違う問題意識を持っており、その団体ならではの独創的な問題解決へのアプローチを持っているということを学びました。もざいくハウスさんは助成事業としてはまだスタートの状態ですが、ぜひ林さんの「多様な社会の中でも貧困や孤独が生まれる社会を変えたい」という熱い思いを事業として形にしてほしいと思います。           (高校3年A)

※ 高校生のプライバシー保護のためイニシャルとさせていただいています。

 


【公益財団法人 助成選考委員会 選考委員 よりご報告】

◇助成対象事業

「地域の大人との交流事業」
(地域の児童養護施設および少年院退所の児童を対象とした、カホン教室、英語で手芸教室、どんな大人がいるかな会の開催事業)
楽器(カホン等)の練習や、モノ作り(手芸等)、その他、大人交流の場づくりなどを実施される予定です。
子どもの居場所、挑戦の場、地域大人との交流の場、またもざいくハウスのサークル活動を通してワークショップの開催、地域での調理交流など多彩多様な関わり、繋がりを作っていく事業です。 

 

◇助成事業の目的 (申請書より抜粋)

地域の大人との交流事業については、地域で住む大人に興味、関心を持ち、学ぶことの意義を子ども達それぞれが感じる機会、また地域の中で暮らす、生きることの大切さを、また施設職員や学校教員以外の大人と出会い、話を聞くことで、多様な価値観を感じ、考えるきっかけを作ることを目的としていらっしゃいます。
(申請書より抜粋)
目指すところは親子分離社会を変えることですが、その為にはあらゆる角度からの支援、応援、関わりが必要だと考えています。
児童養護施設で暮らす子ども達の学力低下、肯定感の低下を改善するには興味を持たせ、自らが学ぶ姿勢、態度を習慣づけることだと思っています。

一方で分離社会を具体的に解消するには、両親が抱える課題を整理する機会が必要です。整理するためには親自身が学ぶことが必須で、学ぶことの興味、関心を抱けるような関係の構築も重要です。
その中で精神医療による治療は一時の改善、もしくは逆に悪化させるケースが多くあります。薬の副作用によりネグレクトを始め、重大な虐待に及ぶケースも少なくありません。

地域に拠点を構えることで、まずは医療から福祉、福祉から草の根応援型へ移行し、また雇用の創造やその為の拠点となれるよう、意見や情報の交換、また連携を深めています。
虐待や貧困による社会的養護、親子分離の社会にしても、精神医療に繋がりやすい社会にしても、きっかけや原因を個人の問題としているところが多いため、今後は社会の共通課題として広めていきたいです。

 

◇助成事業の実施状況

◇5月5日 こどもの日イベント

◇手芸倶楽部 開催
2017年6月7日  2017年6月28日  2017年7月30日  2017年8月9日
2017年9月13日  2017年10月11日  2017年11月13日

◇どんなおとながいるのかな?プロジェクト 開催
2017年9月26日 (漁師編)   2017年11月23日 (マジシャン編)

◇カホン部
2017年9月11日  2017年9月26日  2017年10月5日
2017年10月12日  2017年10月28日

◇勉強会 開催
2017年10月8日 子どもと精神医療

 

◇あらたなチャレンジへ

もざいくハウスの活動を通じて生まれた取り組みとして、新たに運営の場の一つとなる一般社団法人が設立されました。
子どもの居場所つくりと家庭復帰後の親子のサポートが主な活動です。

(設立趣旨)
虐待を疑われ一時保護された親の「同じ想いをする人を減らしたい」という思いと、「親不在の中成長していく子どもに(”ただいま”・”おかえりなさい”)環境を作りたい」という願いが出会って設立された団体です。
しかしその根底には「虐待したい親はいない」という考え、視点を持ちながら、活動を通して、親の抱える課題や悩みを紐解くように親と関われる社会づくりを地道に目指します。

一般社団法人スリーポート  http://threeport.info/    facebookページ

 

◇活動でどんな効果を期待してるのか?

児童養護施設での地域の大人との交流事業は、大人と交流を持つだけではなく、子ども達による実行委員会を立ち上げることにより自主性、主体性を意識するきっかけとなりうるのではないかと考えておられます。交流事業を通して感じたことを児童は促されても多くを語らないが、その後の会話や関わりの中で影響を垣間見えるとのこと。

カホン部の練習では、子ども達それぞれの気分や調子によって影響を受けるけれど、こちらがぶれない態度をすることで、子どもは逆に安定感を持つことが期待できるようです。

両事業とも、一年単位で目標を持ち継続することで見える成果、効果は変わってくると思われますが、地域の大人との交流により、普段とは異なる側面を見たり、価値観を見聞きしたりして、子ども達自身の中で醸成させていくことを感じてもらいたいと考えておられます。

 

◇助成選考委員会 選考委員から

林代表や手芸の先生である大久保さんなど関わられる方々のとても強い思いにあらためて共感しています。
取材を通して、助成先として選考させていただけたことを改めて良い選考ができていると確信することができました。
多くの方の寄付等のご支援を、もざいくハウスさんにつなぐことで、フェアなスタートラインに立つことができない厳しい状況にある子どもたちの支援につながっているとご報告できることを嬉しく思います。

支援の輪が拡がることを期待しております。引き続きよろしくお願いいたします。

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